荒井屋の初代店主・庄兵衛が曙町に店を構えてから百二十年。
その間、関東大震災や横浜大空襲など、時代の荒波に飲まれながらも、現在もこの地で歴史を刻み続けています。
現在、本店の建物は戦後間もない頃、三代目・精一らの手によって再建されたもの。つまり六五年にわたって荒井屋の人々の生き様を見守り続けてきたことになります。
この度、荒井屋本店は建物そのものの歴史に幕を閉じ、次の時代に向けて一歩を踏み出すこととなりました。その礎となる本店の姿を深く心に刻みつけて。
牛鍋処として牛に並々ならぬ想いを抱いている荒井屋。
その想いが建物のいたるところに見られます。
荒井屋に牛肉料理を食べにきて健康になり、幸せになっていただきたいという願いの表れなのでしょう。
「那智黒石(なちぐろいし)」の牛。
この石は
一般には硯や碁石として利用されることが多い。
4代目が地方に出向いて買い求めたこだわりの品で、
現在は万國橋店に置かれている。
木製の牛。背中に童(わらべ)がのった珍しいデザイン。
鉄でできている牛。瓢箪(ひょうたん)の置物と、
6つの瓢箪が描かれた掛軸とともに飾り、
「牛肉を食べて無病(六瓢)息災に」と願いをこめた。
“牛”の文字を象り染めたのれん。
シンプルなデザインは
時代を超えて親しまれている。
「荒井屋」の文字が刻まれている木製の置物。
3代目の頃の増築のお祝いの品だろうか。